【第2ステージ 「島よ」】

 

放送作家としても活躍した詩人 伊藤海彦氏と、合唱曲のみならず「サッちゃん」「犬のおまわりさん」など多くの童謡をも世に出している作曲家 大中恩氏とのコンビによる、単一詩による壮大な合組曲。曲は6つの章に分かれているが、作曲者曰く“時の流れ‥その流れを止めぬ演奏を要求したい‥”とのことから、一般的には途切れることなく演奏される。

 

冒頭の繰り返し「島よ」と呟く8声のコーラスは、あたかもその後の物語のページをめくるようにパートや調性を変えてさまざまな形で登場する。随所に顔を出す、懐しさを醸し出すメロディ、ぶつかり合うリズム、シフォニックなピアノの響き‥。だが歌うものを魅了するのはその音楽だけではない。この詩のストーリーにある名もない島の一生、あるいは何気ない島の一日が、あたかも自分の生きざまでないかと気づかされた時に湧き上がる、言葉にはならない愛おしさ…。

 

自身の歩みやその時の流れを切れ目なく畳み掛けるように迫ってくる「音楽と言葉」には圧倒されるものがあり、1970年の初演から半世紀近くたった今でも色あせない。世代を超えて古今東西もっとも愛されている合唱曲のひとつである所以(ゆえん)である。(2018年11月 Ten.Y.I)